
【目次】*行政書士会研修会等【第3部】 *行政書士会研修会等【第2部】 *行政書士会研修会等【第1部】
9月29日(火)、東京都行政書士会豊島支部が主催する『米国の移民法とビザ申請手続の実際』を受講しました。題目は、①就労ビザと移民ビザの要件、②米国大使館での申請方法、③国務省と国土安全保障省、④オーバーステイ歴などのビザ取得への影響、⑤入国審査と上陸拒否、⑥全ての査証免除者に導入される新システムESTA、⑦【入管法】日米の比較とビジネスチャンスでした。講師は、米国弁護士(米国移民弁護士協会会員)であり、日本では外国法事務弁護士(東京第一弁護士会会員)の資格を持つ、マーカス・カズンズ先生でした。
カズンズ先生によると、「近年ますます増加する不法滞在者・就労者及びテロリストに対応するため、米国の移民政策は頻繁な移民法の改定により、複雑かつ制限的になってきましたが、適切な対応をとればビザの取得は難しくありません。ただし、ビザを確実に取得するには米国移民法を良く理解した上で、専門家に依頼することが成功への近道です」。
米国移民国籍法第214(b)条は、全ての非移民ビザ申請者を、米国外に戻る意思を示す住居があることを領事に十分証明できない限り、米国に永住したいという意思を持っている者であると仮定しています。自分の居住地へ戻らなければならない理由となる、家族との結び付き、社会的・経済的理由、又は雇用など、それぞれの立場での自分の居住地との結び付きを証明することにより、この仮定を覆すことができます。
8月1日(土)、東京都行政書士会国際業務研究会が主催する「実務者向け研修会」を受講しました。講師は元行政書士で、現在弁護士(第二東京弁護士会所属)の山脇康嗣先生でした。テーマは、『1.行政書士業務に活用できる入管判例分析その他弁護士から見た入管行政の現状、2.入管業務における弁護士からの注意点、3.入管業務における弁護士と行政書士の相違点及び今後の双方の協働作業の可能性』でした。
行政書士が司法手続に関与することはありませんが、司法手続が行政手続に反映している(入管は意識している)関係上、山脇先生による入管判例分析は大変参考になり、今後の実務に活かさせて頂きます。
入管判例分析の際、以下の事項について解説して頂きました。
『外国人が本邦に在留する権利、在留期間更新申請における法務大臣の裁量』、『一在留一在留資格の原則』、『在留外国人に付与された在留期間の更新を申請する権利が特定の在留期間を指定すべきことを申請する権利まで含むものであるか』、『再入国許可を受けずに本邦を出国したことによる協定永住資格の喪失、再入国許可処分取消しの訴えの利益』、『在留資格変更の許否の判断に当たって、起訴されたとの一事をもって不利益に扱うことは無罪推定の原則に反するか』、『1.再入国許可処分における法務大臣の裁量の範囲、2.再入国不許可処分を受けた者の本邦からの出国と不許可処分の取消しを求める訴えの利益』、『在留資格変更許可申請に対する不許可処分取消しの訴えの利益は、申請者が、再入国許可を得ずに本邦から出国することにより失われるか』、『1.在留期間の不更新通知の行政処分性、2.一在留一在留資格の原則、3.“技能”の在留資格該当性範囲』、『退去強制事由である“報酬を受ける活動を専ら行っていると明らかに認められる者”の意義』、『“日本人の配偶者等”の在留資格該当性』、『本体配偶者が在留資格を喪失等した場合の従属配偶者の在留資格への影響』、『1.在留特別許可の判断枠組み、2.日本人男性と結婚し、当該夫との間の実子3人を有する外国人女性が、不法残留に加え、2度の薬物有罪判決(2度目は実刑判決)を受けていたにもかかわらず、在留特別許可が認められた事案』、『執行停止の申立てが、退去強制令書に基づく収容部分の執行も含め、認容された事例』、『1.在留期間更新不許可処分取消訴訟と退去強制令書発布処分取消訴訟の併合提起の可否、2.在留期間更新不許可処分の執行停止を求める利益の存否、3.退去強制令書が発布されている場合における在留期間更新不許可処分の執行停止につき、“回復困難な損害を避けるための緊急の必要性がある”か否か』、『1.在留特別許可の申請権の有無、2.在留特別許可の義務付け訴訟の訴訟要件』、『外国人が不法上陸及び不法滞在していることについて、当該外国人自身には責めるべき点がない場合の在留特別許可の判断のあり方』、『再審情願の法的性質及び再審情願における法務大臣等の裁量、2.義務付け訴訟の訴訟要件』、『口頭審理を放棄した場合における在留特別許可の余地及び在留特別許可の義務付けの訴え(非申請型)を提起することの可否』など。
6月20日(土)、東京都行政書士会国際業務研究会が主催する「実務者向け研修会」を受講しました。テーマは、『入管法改正と今後の入管行政の動向について』でした。講師は元東京入国管理局就労審査部門首席審査官で、元入国者収容所東日本入国管理センター次長の大山侃二先生でした。以下の入管法改正点について、現在の法案協議の状況を踏まえて、詳細に解説して頂きました。なお、大幅に入管法が改正されるのは、1990年以来20年ぶりです。
1.新たな在留管理制度の導入に係る措置、2.外国人研修制度の見直しに係る措置、3.在留資格「留学」と「就学」の一本化に係る措置、4.入国者収容所等視察委員会の設置、5.拷問禁止条約等の送還禁止規定の明文化、6.在留期間更新申請等をした者の在留期間の特例に係る措置、7.上陸拒否の特例に係る措置、8.乗員上陸の許可を受けた者の乗員手帳等の携帯・提示義務に係る措置、9.不法就労助長行為等に的確に対処するための退去強制事由等の整備に係る措置。法案成立後、1の措置は公布の日から起算して3年以内の政令で定める日、2~4・6・7・9の措置は同1年以内の政令で定める日、5の措置は公布の日、8の措置は同6月以内の政令で定める日に施行されます。
1については、法務大臣が必要な情報を継続的に把握する制度を構築するための措置が行われます。法務大臣は在留資格をもって日本に中長期間在留する外国人に、基本的身分事項、在留資格・在留期間等を記載した在留カードを交付します。対象外国人は、上陸後に定めた住居地を、一定期間内に当該住居地の市町村長を経由して法務大臣に届け、また、受入先や身分関係に変更があった場合、法務大臣に届けねばなりません。
そして、法務大臣は、必要がある場合、届出事項について事実の調査をすることができます。虚偽の住居地を届け出たことや、配偶者の身分を有する者としての活動を6月以上行わないで在留していること等を取消事由に追加し、在留資格の取消手続における書面の送達に関する規定の整備を行います。さらに、在留カード偽造行為等について罰則・退去強制事由を整備するとともに、不法就労活動に対する罰則を整備します。
また、適法に在留する外国人の利便性を向上させるための措置として、在留期間の上限を5年に引き上げ、有効な旅券及び在留カードを所持する外国人は、1年以内の出国については再入国許可が不要となります。長期出国の場合、再入国許可が必要ですが、許可の有効期間は5年に伸長されます。なお、外国人登録法は廃止されます。
さらに、特別永住者に係る措置として、法務大臣は、特別永住者という法的地位の証明書である特別永住者証明書を交付します。特別永住者は2年以内の出国については再入国許可が不要となり、長期出国の場合、再入国許可の有効期限は6年に伸長されます。
2については、研修生・技能実習生を実質的に低賃金労働者として扱うなど、不適正な受入れが増加している現状に対処し、彼らの保護の強化を図るため、所要の措置が行われます。
在留資格「就労研修」が創設され、その活動内容は、「講習による知識修得活動」及び「雇用契約に基づく技能等修得活動(労働基準法、最低賃金法等の労働関係法令が適用されます)」です。講習の期間は全体の6分の1以上の期間(海外で160時間以上の事前講習を受けた場合、全体の12分の1以上の期間)、講習の内容は日本語、関係法令・修得技能に関する知識等です。就労研修の実施が認められる企業は、現行の在留資格「研修」と同じです。
また、在留資格「技能実習」が創設され、その活動内容は、就労研修に従事し、技能検定基礎2級等に合格した者が行う雇用契約に基づく技能実習活動です。技能実習期間は、「就労研修」の期間と合わせて最長3年です。技能実習の実施が認められる企業は、原則就労研修を行った企業です。
そして、不正な研修・技能実習活動のあっせん等を行った者は退去強制事由に追加されます。
6については、以下の規定が設けられます。在留期間満了の日までに申請した場合、申請に対する処分が在留期間満了までにされないとき、当該外国人はその期間満了後も、当該処分がされる日又は従前の在留期間満了の日から2月を経過する日のいずれか早い日まで、引き続き当該在留資格をもって日本に在留することができます。
7については、以下の規定が設けられます。上陸拒否事由に該当する特定の事由がある場合であっても、法務大臣が相当と認めるときは、上陸を拒否しないことができます。例えば、不法残留によって退去強制された外国人が日本人と婚姻し、かつその日本人が当該外国人の本国を何度も訪問したなど婚姻の実体がある場合、上陸拒否期間中(5年又は10年)であっても上陸特別許可が認められ、在留資格「日本人の配偶者等」が与えられることがあります。このような外国人は、その後の再入国の際、上陸を拒否されません。
「入管法及び入管特例法の改正等(2009年7月15日公布)」をご参照下さい。
研修項目は、1.ケース別永住解析(9つのケースとその他注意点)、2.改正国籍法と告示外定住(告示定住:連れ子・日系、告示外:離婚・日本人の母)のケース(4つのケース)、3.日本人の配偶者等(3つのケース)、4.ここ1年の案件から役立つ情報(6つの情報)でした。さらに、家事使用人の雇用主係る要件の運用、大学等を卒業した留学生が行う就職活動の取扱い、在留資格の変更・在留期間の更新許可のガイドラインについても解説して頂きました。
当ホームページ内にある、「永住許可」、「在留許可のガイドライン(改正)」、「留学生による就職活動」、「国籍法改正」なども合わせてご覧下さい。