入国及び在留手続
Procedures for Entry and Stay in Japan

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外国人の子どもの教育を受ける権利

1.外国人の人権

(1)憲法の保障する人権
①通説:権利の性質に応じて個別的に判断すべきとの性質説の立場
②判例:最高裁昭和53年10月4日判決[マクリーン判決](性質説の立場、最高裁判所民事判例集32巻7号1223頁)
 「基本的人権の保障は、権利の性質上日本国民のみを対象としていると解されるものを除き、わが国に在留する外国人に対しても等しく及ぶ」、「外国人に対する憲法の基本的人権の保障は、右のような外国人在留制度のわく内で与えられているにすぎず、在留の許否を決する国の裁量を拘束するまでの保障・・・が与えられているものではない」と判示しました。
*関連項目:出入国管理に係る行政裁量
(2)在留資格制度による外国人の類型
①高学歴や技能、職歴を必要とする、特定の専門分野の職種で就労可能な在留資格
 教授、投資・経営、医療、教育、技術、人文知識・国際業務、興行、技能など
②就労不可能な在留資格(ただし、資格外活動許可を受ければ条件付きで就労可能)
 文化活動、短期滞在、留学、家族滞在など
③職種に関係なく就労可能な在留資格
 永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者
④特に活動が指定される在留資格(就労可能な場合と不可能な場合がある)
 特定活動
⑤在留資格なし(不法残留者と不法入国者を合わせた不法滞在者)
*関連項目:在留資格一覧表

2.民族教育の自由

(1)多文化教育の必要性
①日本語・日本文化等の教育:日本で学び生活していくうえで不可欠
②母語・母国文化等の教育:自己のアイデンティティの確立のために不可欠
 家庭内教育(憲法13条の幸福追求権)、民族学校設立(憲法21条の結社の自由)
 原則、日本国民と同等の保証が在留外国人にも及びます。
(2)民族教育の自由への制限
 憲法14条、19条、21条に違反します。

3.民族学校の不利益扱い

(1)民族学校の分類
①一条校:学校教育法上の要件に合致する教育を行っている正規の学校で、建国中学等があります。
 学習指導要領に合致した授業+民族教育の授業⇒生徒の過重負担が問題となります。
②各種学校としての民族学校
③各種学校になれない民族学校
 人的・物的資源が不十分な小規模民族学校で、運営費等の公的助成を得られません。
 南米系民族学校の多くがこれにあたります。
 なお、文科省は2004年6月に「特別の事情があり、かつ教育上及び安全上支障がない場合」〔各種学校規定10条〕には各種学校として認可しうると基準を緩和しています。
(2)各種学校としての民族学校に対する不利益扱い
*日本の一条校と比べて不利益扱いを受けてきましたが、同等扱いも徐々に進展中です。
◆文部省は外国人中学校卒業生に大学入学資格検定の受験資格を認めました。(1999年)
◆文科省は外国人高等学校卒業生の大学受験を認めました。(2003年)
◆各種学校としての民族学校への補助金は私学助成と比べると低い水準ですが、それを拡充する地方自治体が増えており、外国人生徒の保護者へ補助金を交付している地方自治体もあります。
◆校舎増改築等の際に募る寄付金に税の優遇措置がとられていません。
◆日本学生支援機構からの奨学金や独立行政法人日本スポーツ振興センターによる災害共済給付は、各種学校としての民族学校の生徒を対象としていません。

4.民族学級

(1)日韓外相覚書(1991年)
 「日本社会において韓国語等の民族の伝統及び文化を保持したいとの在日韓国人社会の希望を理解し、現在、地方自治体の判断により学校の課外で行われている韓国語や韓国文化等の学習が今後も支障なく行われるよう日本国政府として配慮する」とされています。
(2)大阪府内民族学級
*「一条校」に在籍する在日韓国・朝鮮人の生徒が、放課後1時間程度、韓国・朝鮮の言語、地理、歴史、文化等を学習していますが、講師の報酬が低額であるため講師が不足しています。

5.無償の義務教育

(1)外国人の子どもの取扱い
*外国人の子どもには就学義務は課せられていませんが、日本の公立小・中学校への就学を希望する場合には受け入れます。受け入れ後の扱いは、授業料不徴収、教科書の無償給付、経済的困窮家庭への就学援助(学校教育法25条)なども日本国民と同じです。
(2)無償の義務教育について
①外国人の子どもは、定住外国人でも、日本の学校への就学を強制できません。強制は、母国の価値観に基づいた教育を行う自由、若しくは受ける権利の侵害として、違憲になる場合があります。
②国際人権規約・社会権規約13条[教育についての権利]→不就学対策
◆教育についてすべての者の権利を認める(1項)。
◆初等教育は、義務的なものとし、すべての者に対して無償のものとすること(2項(a))。
 外国人に就学義務を課したものではなく、希望する外国人への就学機会の保障を国に義務付けたものと解されています。
(3)就学案内について
①市町村教育委員会は、学齢期の外国人の子どもの親に対しても、外国人登録原票に基づいて就学案内を発給します。
②不法滞在者等で外国人登録をしていない場合、就学通知自体が届きません。親が不法滞在者である場合、そのことから当然に子どもが無権利状態に置かれるわけではありません。その存在を把握した場合、就学を通知すべきです。

6.高校進学

(1)日本の高校の受験資格(学校教育法47条、同法施行規則63条)
①日本の義務教育修了
②外国で9年の課程の学校教育修了
③中学校卒業者と同等以上の学力があると高校によって認められた場合
(2)外国人特別選抜を実施する公立学校の例
①都立国際高校:在京外国人生徒を対象に、作文(日本語又は英語)、面接による選抜。
②都立の定時制単位高(東京都教育相談センターによる外国人生徒向けの高校紹介)
◆昼夜間定時制高校6校:3部制、単位制、普通科(入試は3教科又は5教科)
 新宿山吹、一橋、浅草、荻窪、砂川、八王子拓真
◆チャレンジスクール5校:3部制、単位制、総合学科(入試は作文、面接)
 桐ヶ丘、世田谷泉、大江戸、六本木、稔ヶ丘

7.二ヶ国語教育

(1)文部科学省による「日本語指導が必要な外国人児童生徒数」調査
①2008年9月時点、前年比13%増の28,575人で過去最高。6年連続で増加。
②このうち実際に指導を受けたのは85%の24,250人。
③母国語別:ポルトガル語40%、中国語20%、スペイン語13%
④学校種別:小学校3,791校・19,504人、中学校2,028校・7,576人、高校342校・1,365人。
⑤都道府県別:愛知県5,844人、静岡県2,903人、神奈川県2,794人、東京都2,203人
⑥指導対象の児童生徒数:1人の学校2,844校(全体の46%)、
 5人未満の学校全体の約8割→特別なクラスの設置又は特別な指導体制は不可能
(2)文部科学省による施策
①1992年から日本語指導に対応した教員定数の特別加算
②1999年から「外国人児童生徒等教育相談員派遣事業」実施
③JSLカリキュラム(“Japanese as a Second Language”カリキュラムの略)
 日本語を母語としない児童のために、日本語教育と教科指導を統合したカリキュラム。
(3)指導方法
①国際学級(豊橋市):日本語入門指導や日本の生活に適応するための指導を行います。
②放課後に授業内容をやさしい日本語で説明します。
③授業中に授業をしている教員とは別の教員が授業内容をやさしい日本語で説明します。
④日本語指導を行う教師は、担当する外国人生徒の母語を使える者であることが理想です。
(4)母語教育:自己のアイデンティティ確立に寄与
①「すべての移住労働者とその家族の権利保護に関する条約」に規定されているような母語及び出身国の文化の教育の保障にまでは踏み込んでいません。日本はこの条約を批准していません。
②国際的には、母語や出身国の文化の教育を保証する流れにあります。

8.外国人の子どもの退去強制処分

(1)不法滞在者(不法残留者及び不法入国者)の子どもの就学
①多くの自治体は、外国人登録証の提示がなくても、就学を認めています。
②警察官による親への職務質問、住民による通報及び公務員による通報(出入国管理及び難民認定法62条1項、2項)を契機として、入管により退去強制手続がとられ、子どもの日本での就学継続が不可能になります。
③不法滞在者は、長期間日本で就労・生活し、子どもを就学させていても、退去強制事由(同法第24条)に該当し、退去強制手続がとられます。
④この手続の過程で、在留特別許可を法務大臣に願出をします。
⑤在留特別許可が認められず、退去強制令書発付された場合、法務大臣の裁決及び退去強制令書発付処分の取消訴訟在留特別許可の義務付け訴訟(非申請型)退去強制令書発付処分の執行停止の申立て仮放免許可の申請などを通じて争うことができます。しかし、法務大臣の敗訴が確定して在留特別許可が付与される事例は非常に少ないです。
(2)在留特別許可(法務大臣の裁量行為、同法50条1項)
最高裁昭和34年11月10日判決(最高裁判所民事判例集13巻12号1493頁)
 「在留の特別許可を与えるかどうかは法務大臣の自由裁量に属するものと解すべき」と判示しました。
最高裁昭和54年10月23日判決(判例時報1008号138頁)
 退去強制令書の発付につき、不法滞在者の「在留の継続は違法状態の継続にほかならず、それが長期間平穏に継続されたからといって直ちに法的保護を受ける筋合いのものではない」と判示しました。
東京地裁平成15年9月19日判決(判例時報1836号46頁)
 「適法な在留資格を持たない外国人が長期間平穏かつ公然と我が国に在留し、その間に素行に問題なくすでに善良な一市民として生活の基盤を築いていることが、当該外国人に在留特別許可を与える方向に考慮すべき第一の事由であることは、本件処分時までに黙示的にせよ実務上確立した基準であったと認められるのであり、本件処分は、これを無視したばかりか、むしろ逆の結論を導く事由として考慮しているのであって、そのような取扱いを正当化する特段の事情も見当たらず、しかも、それが原告らに最も有利な事由と考えられるのであるから、当然考慮すべき事由を考慮しなかったことにより、その判断が左右されたものと認めざるを得ない」と判示しました。
◆裁量権を逸脱又は濫用してされたものとして、退去強制令書発付処分を取り消しました。
◆なお、この判決は、控訴審たる東京高裁平成16年3月30日判決によって取り消されました。
④最高裁で在留特別許可願出者の敗訴確定後、法務大臣により在留特別許可が認められた事例(2009年)
・フィリピン人の子ども(退去強制令書発付時)のケース
・中国人の子ども(退去強制令書発付時)のケース
*関連項目:在留特別許可
(3)児童の権利に関する条約
第3条[児童の最善の利益の考慮]
 児童に関するすべての措置をとるに当たっては、公的若しくは私的な社会福祉施設、裁判所、行政当局又は立法機関のいずれによって行われるものであっても、児童の最善の利益が主として考慮されるものとする。
第9条[親からの分離の禁止及びその例外]
1 締約国は、児童がその父母の意思に反してその父母から分離されないことを確保する。ただし、権限のある当局が司法の審査に従うことを条件として適用のある法律及び手続に従いその分離が児童の最善の利益のために必要であると決定する場合は、この限りでない。このような決定は、父母が児童を虐待し若しくは放置する場合又は父母が別居しており児童の居住地を決定しなければならない場合のような特定の場合において必要となることがある。
第10条[家族再会]
1 前条1の規定に基づく締約国の義務に従い、家族の再統合を目的とする児童又はその父母による締約国への入国又は締約国からの出国の申請については、締約国が積極的、人道的かつ迅速な方法で取り扱う。締約国は、更に、その申請の提出が申請者及びその家族の構成員に悪影響を及ぼさないことを確保する。
日本政府による解釈宣言(外務省公式サイト)
◆日本国政府は、児童の権利に関する条約第9条1は、出入国管理法に基づく退去強制の結果として児童が父母から分離される場合に適用されるものではないと解釈するものであることを宣言する。
◆日本国政府は、更に、児童の権利に関する条約第10条1に規定される家族の再統合を目的とする締約国への入国又は締約国からの出国の申請を「積極的、人道的かつ迅速な方法」で取り扱うとの義務はそのような申請の結果に影響を与えるものでなないと解釈するものであることを宣言する。

9.外国人の教員任用

(1)公立学校の教員の資格(欠格)要件
①地方公務員法、教育公務員特例法、学校教育法、教育職員免許法が適用されます。これらの法律に「国籍条項」は存在しません。自治省公務員第一課長通達に沿い「国籍条項」が設けられたり、設けられなかったりしてきました。
②昭和48(1973)年自治省公務員第一課長回答
 自治省の立場は「公務員の当然の法理に照らして、地方公務員の職のうち公権力の行使又は地方公共団体の意思の形成への参画に携わるものについては、日本国籍を有しないものを任用することはできない」というものでした。
③公権力の行使又は地方公共団体の意思の形成への参画に携わる者以外の地方公務員については、日本国籍を有しない者も任用しうることとなり、各地方公共団体の判断と実情に応じて任用しうると考えられるようになりました。
④国公立大学外国人教員任用法の施行に関する文部次官通知の付言(1982年)
◆「国立又は公立の大学における外国人教員の任用等に関する特別措置法」
 外国人も国公立大学の教授、助教授、又は講師に任用でき(同法2条1項)、教授会その他大学の運営に関与する合議制の機関の構成員となり、その議決に加わることができるようになりました(同条2項)。
◆文部次官通知の付言
 「国立又は公立の小学校、中学校、高等学校等の教諭等については、従来どおり外国人を任用することは認められないものであることを念のため申し添えます」。
(2)日韓外相覚書(1991年)以降
日韓外相覚書
 「公立学校の教員への採用については、その途を開き、日本人と同じ一般の教員採用試験を認めるよう各都道府県を指導する。この場合において、公務員任用に関する国籍による合理的な差異を踏まえた日本政府の法的見解を前提としつつ、身分の安定や待遇についても配慮する」とされています。
②平成3(1991)年3月22日文部省助成局長通知
◆教員採用試験における国籍条項を廃止する。
◆「常勤講師」としての任用を認める。
◆校長をはじめ、教務主任、学年主任以上の管理職には就けないが、学級担任や教科担任として授業を実施するなど教育面では教諭とほぼ同等の役割を認める。
◆身分が安定するよう、任期をつけず正式任用し、待遇についても教諭との差が少なくなるように配慮する。
(3)大学の国際化の推進を打ち出す中、大学の国際化は停滞
*「2020年度までに日本への留学生を現在の2.5倍の30万人に増やす計画」
~文科省がまとめた大学院活動状況調査(2007年度の数字)より~
◆外国人教員数は5,763人、大学教員のうち外国人が占める割合は3.4%
◆外国人教員を受け入れるための取り組み(教員公募情報を海外の学術誌に掲載等)
 「している」:28.1%(国立54.7%、公立33.8%、私立22.1%)
 「検討中」:13.4%
 「実施も検討もしていない」:58.5%
  ○教授会や日常的な事務を英語で行う必要が出てくるという理由等

【参考文献】

・米沢広一『憲法と教育15講[改訂版]』北樹出版、2008年、155~167頁
・佐藤郡衛「日本における外国人教育政策の現状と課題―学校教育を中心にして―」
 移民政策学会編『移民政策研究 2009 Vol.1 創刊号』現代人文社、2009年、42~53頁
・手塚和彰『外国人と法[第3版]』有斐閣、2005年、331~347頁

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