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在留特別許可

入管法第50条第1項

 外国人が、オーバーステイ等の退去強制事由に該当するか否かは、入国警備官の違反調査入国審査官の違反審査特別審理官の口頭審理法務大臣の裁決という過程を経て決定されます。法務大臣によって、退去強制事由に該当すると裁決された容疑者は、原則的に日本から退去強制されることになります。しかし、法務大臣が当該容疑者の在留を特別に許可すべき事情があると認めるとき(例えば、当該外国人が日本人と合法的かつ実質的に結婚している場合)は、その者の在留を特別に許可することができるとされています。この在留特別許可法務大臣の自由裁量です。

『在留特別許可の運用』

 平成19年11月、出入国在留管理局は在留特別許可の運用について次のように発表しました。

 「入管法第50条に規定する在留特別許可は、法務大臣の裁量的な処分であり、その許否判断に当たっては、個々の事案ごとに、 在留を希望する理由、家族状況、生活状況、素行、内外の諸情勢その他諸般の事情に加え、その外国人に対する人道的な配慮の必要性と他の不法滞在者に及ぼす影響とを含めて、総合的に考慮しています」。

 不法入国、不法残留は決して許されるべきものではありません。しかし、入管法違反(不法入国、不法残留)以外に法令違反がなく、日本での安定した生活の実態(例えば、日本人、永住者、定住者の配偶者等として同居している事実やその信憑性)が認められる場合日本における治療継続や学業継続などのような人道的な配慮が必要な場合、在留特別許可が下りる可能性があります。

 なお、在留期間は1年であり、期間満了の2ヶ月前から期間満了までの間に、在留期間更新許可申請を行う必要があります。これを行わないと、不法残留となり、退去強制手続が執られてしまいます。ご注意ください。


『在留特別許可に係るガイドライン』(平成21年7月改訂、法務省入国管理局)

第1 在留特別許可に係る基本的な考え方及び許否判断に係る考慮条件
 在留特別許可の許否に当たっては、個々の事案ごとに、在留を希望する理由、家族状況、生活状況、素行、内外の諸情勢、人道的な配慮の必要性、更には、我が国における不法滞在者に与える影響等、諸般の事情を総合的に勘案して行うこととしており、その際、考慮する事項は次のとおりである。
【積極要素】
 積極要素については、入管法第50条第1項第1号から第3号(永住許可を受けているとき、かつて日本国民として本邦に本籍を有したことがあるとき、人身取引等により他人の支配下に置かれて本邦に在留するものであるとき)に掲げる事由のほか、次のとおりとする。
1 特に考慮する積極要素
(1)当該外国人が、日本人の子又は特別永住者の子であること
(2)当該外国人が、日本人又は特別永住者との間に出生した実子(嫡出子又は父から認知を受けた非嫡出子)を扶養している場合であって、次のいずれにも該当すること
 ア 当該実子が未成年かつ未婚であること
 イ 当該外国人が当該実子の親権を現に有していること
 ウ 当該外国人が当該実子を現に本邦において相当期間同居の上、監護及び養育していること
(3)当該外国人が、日本人又は特別永住者と婚姻が成立している場合(退去強制を免れるために、婚姻を仮装し、又は形式的な婚姻届を提出した場合を除く。)であって、次のいずれにも該当すること
 ア 夫婦として相当期間共同生活をし、相互に協力し扶助していること
 イ 夫婦の間に子がいるなど、婚姻が安定かつ成熟していること
(4)当該外国人が、本邦の初等・中等教育機関(母国語による教育を行っている教育機関を除く。)に在学し相当期間本邦に在住している実子と同居し、当該実子を看護及び養育していること
(5)当該外国人が、難病等により本邦での治療を必要としていること、又はこのような治療を要する親族を看護することが必要と認められる者であること
2 その他の積極要素
(1)当該外国人が、不法滞在者であることを申告すため、自ら地方入国管理官署に出頭したこと
(2)当該外国人が、別表第二に掲げる在留資格(永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者)で在留している者と婚姻が法的に成立している場合であって、前期1の(3)のア及びイに該当すること
(3)当該外国人が、別表第二に掲げる在留資格で在留している実子(嫡出子又は父から認知を受けた非嫡出子)を扶養している場合であって、前期1の(2)のアないしウのいずれにも該当すること
(4)当該外国人が、別表第二に掲げる在留資格で在留している者の扶養を受けている未成年・未婚の実子であること
(5)当該外国人が、本邦での滞在期間が長期間に及び、本邦への定着性が認められること
(6)その他人道的配慮を必要とするなど特別な事情があること
【消極要素】
 消極要素については、次のとおりである。
1 特に考慮する消極要素
(1)重大犯罪等により刑に処せられたことがあること
 〈例〉・凶悪・重大犯罪により実刑に処せられたことがあること
    ・違法薬物及び拳銃等、いわゆる社会悪物品の密輸入・売買により刑に処せられたことがあること
(2)出入国管理行政の根幹にかかわる違反又は反社会性の高い違反をしていること
 〈例〉・不法就労助長罪、集団密航に係る罪、旅券等の不正受交付等の罪などにより刑に処せられたことがあること
    ・不法・偽装滞在の助長に関する罪により刑に処せられたことがあること
    ・自ら売春を行い、あるいは他人に売春を行わせる等、本邦の社会秩序を著しく乱す行為を行ったことがあること
    ・人身取引等、人権を著しく侵害する行為を行ったことがあること
2 その他の消極要素
(1)船舶による密航、若しくは偽造旅券等又は在留資格を偽装して不正に入国したこと
(2)過去に退去強制手続を受けたことがあること
(3)その他の刑罰法令違反又はこれに準ずる素行不良が認められること
(4)その他在留状況に問題があること
 〈例〉・犯罪組織の構成員であること
第2 在留特別許可の許否判断
 在留特別許可の許否判断は、上記の積極要素及び消極要素として掲げている各事項について、それぞれ個別に評価し、考慮すべき程度を勘案した上、積極要素として考慮すべき事情が明らかに消極要素として考慮すべき事情を上回る場合には、在留特別許可の方向で検討することとなる。したがって、単に、積極要素が一つ存在するからといって在留特別許可の方向で検討されるというものではなく、また、逆に、消極要素が一つ存在するから一切在留特別許可が検討されないというものでもない。
〈「在留特別許可方向」で検討する例〉
・当該外国人が、日本人又は特別永住者の子で、他の法令違反がないなど在留の状況に特段の問題がないと認められること
・当該外国人が、日本人又は特別永住者と婚姻し、他の法令違反がないなど在留の状況に特段の問題がないと認められること
・当該外国人が、本邦に長期間在住していて、退去強制事由に該当する旨を地方入国管理官署に自ら申告し、かつ、他の法令違反がないなど在留の状況に特段の問題がないと認められること
・当該外国人が、本邦で出生し10年以上にわたって本邦に在住している小中学校に在学している実子を同居した上で看護及び養育していて、不法残留である旨を地方入国管理官署に自ら申告し、かつ当該外国人親子が他の法令違反がないなど在留の状況に特段の問題がないと認められること
〈「退去方向」で検討する例〉
・当該外国人が、本邦で20年以上在住し定着性が認められるものの、不法就労助長罪、集団密航に係る罪、旅券等の不正受交付等の罪で刑に処せられるなど、出入国管理行政の根幹にかかわる違反又は反社会性の高い違反をしていること
・当該外国人が、日本人と婚姻しているものの、他人に売春を行わせる等、本邦の社会秩序を著しく乱す行為を行っていること

『退去強制手続の簡略図』

在留特別許可

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